ヒメアノールは根っからのサイコパスの恐怖が伝わってくる作品です。
映画も原作に負けず劣らずの面白さです。

概要

  • 作者:古谷 実(ふるや みのる)
  • 掲載:週刊ヤングマガジン(講談社)
  • 期間:2008年~2010年にかけて連載
  • 巻数:全6巻(完結)
  • 備考:2016年に実写映画化

あらすじ

ある清掃会社で働く岡田 進(おかだ すすむ)は、ただ同じことが繰り返されて終わっていく毎日に言いようのない不安を覚えていた。

彼女もできたことがなく、やりがいもない。
 
自分だけが取り残されていくと感じていた岡田は、同じ会社で働く安藤 勇次(あんどう ゆうじ)に声をかける。

安藤を自分よりも冴えない毎日を送っていそうだと決めつけ、食事に誘ったことがきっかけで仲良くなる二人。

ある日、安藤の片思いの相手である、阿部ユカ(あべ ゆか)が働くカフェへ寄った際、岡田は高校時代の同級生である森田 正一(もりた しょういち)を見かける

森田は高校時代は同級生から壮絶ないじめを受けていた男であった。

森田はユカを付けねらっているストーカーであり、ひょんなことから、岡田、安藤は彼女を森田から守ることとなる。

森田の正体は、人間の首を絞めて殺すことでしか性的な興奮を得ることができないサイコパスであった。

森田は衝動的に殺人を犯した際、同じくいじめを受けていた和草を強引に協力させ、死体の処理もしていた。

その後、岡田はユカと付き合うこととなり、安藤にも自身を好きだという女性が現れ、それぞれ幸せな日常を送っていたが、森田はユカのことをあきらめていなかった。

ユカの首を絞め、苦しむ姿をみることを最後の目的と考える森田に、岡田たちの幸せな日々は壊されようとしていた。

登場人物紹介

岡田 進(おかだ すすむ)
清掃会社で働く25歳の青年。何事もなく繰り返されていく日々に不安感を覚えていたが、安藤と仲良くなったことをきっかけに日常に刺激が生まれていく。誠実で優しい性格。必死に彼女のユカを森田から守ろうとする。

・安藤 勇次(あんどう ゆうじ)
岡田の同僚。年齢は31歳。岡田のことを大親友と思っている。ユカに惚れていたが、岡田がユカに告白されたことで彼を一時恨むこととなる。性格は純粋であるが、一度いじけるとなかなか立ち直れない。女性に惚れやすい一面がある。

・森田 正一(もりた しょういち)
岡田の元同級生。高校時代は酷いいじめを受けていた。人間の首を絞めて殺すことで性的興奮を覚えるサイコパス。学生時代より、人とは違う性質に気づいており、たまたまこうなってしまっただけでツイてなかったと思っている。ユカの首を絞め殺すことを人生最大の目的としている。

阿部 ユカ(あべ ゆか)
カフェで働く美人女性。森田にストーカーされていたことより岡田と出会い、交際することとなる。森田の中学時代の美しい音楽教師と似ていることから、執拗に付け狙われることとなる。

織田 涼子(おだ りょうこ)
スポーツジムで働いている女性。厳格な両親に育てられた影響から感情が表に出せなくなってしまった。安藤の前では自然と感情が出せることから、彼のことが好きになる。

和草 浩介(わぐさ こうすけ)
森田と同じく、高校時代は酷いいじめを受けていた。実家はホテルを経営しており、跡をついでいる。森田がいじめた相手を殺した際、共犯者として手伝ったことから脅されており、森田に毎月金を振り込んでいる。

見どころ・おすすめポイント

殺人鬼森田の凶悪ぶり

森田は根っからのサイコパスで、殺人を犯す時のためらいは全くありません

普通は計画をしっかり立てて、証拠は残さないようにって考えると思うんですけど、すべてデタラメで、そのときの衝動で殺してしまっています

でも、森田にとってはそれが普通なんですよね。普通の人が興奮するようなことには一切感情が動かない。

本当にサイコパスな人間がいたら、森田みたいな感じなんだろうか?って思ってしまいます。

勝手にこんな人間に生まれてきてしまってツイてなかったとしか言いようがない、かわいそうだと思わないか?」とつぶやく森田が印象的でした。

日常の陽と陰のギャップ

ヒメアノールはサイコパスの恐怖を絶妙に表現している漫画ですが、漫画を読み始めたときは、ほのぼのした漫画だなー。これは本当に殺人のシーンが出てくるのか?って感じでした。

主人公の岡田や安藤たちのシーンはほのぼのした、バカを言い合う平和な描写が続きますが、森田が出てくると一気に血生臭くなります。

明るいところに急に狂気がにじみ出るギャップは何ともいえず、より一層の恐怖を感じます。

「ヒメアノール」の感想まとめ

作者の古谷 実(ふるや みのる)さんの描く漫画は、「行け!稲中卓球部」のようなギャグ要素の強いものもあれば、「ヒミズ」や本作の「ヒメアノール」のような闇の深い内容のものもありますが、個人的には後者の方が断然面白い!と思います。

特にヒメアノールは、日常に潜む闇のみせ方が非常に巧妙で、続きが気になって一気に読んでしまう。そんな漫画でした。

この漫画の主人公は岡田ですが、森田の引き立て役のような存在でしか感じませんでした。

それくらい森田の狂気に引き込まれてしまった感覚です。

映画も観ましたが、漫画同様に狂気が溢れている仕上がりでした。

まだ読んでいない方には是非おススメします!