寄生獣は言わずと知れた名作ですね。
生きている人間がいかに環境を破壊しているか等の哲学的な要素も濃く、深く考えさせられる作品です。
1995年に連載終了してから、約20年後の2014年、2015年に映画化されました。
作者の岩明 均さんは、現在は「ヒストリエ」という古代ギリシャをテーマにした漫画を描かれています。

概要

  • 作者:岩明 均(いわあき ひとし)
  • 掲載:モーニングオープン増刊(講談社)→月刊アフタヌーン(講談社)
  • 期間:1988年~1995年にかけて連載
  • 巻数:全10巻(完結)
  • 備考:2014年、2015年に実写映画化
    2014年にアニメ化

あらすじ

ある日、地球に人間の脳を支配するパラサイト(寄生生物)が発生する。

パラサイトは人間の耳などから体内に侵入し、脳を乗っ取る

寄生された人間は姿形はそのままだが、脳が支配されているため、感情はなくしてしまう

そして、他の人間を食い殺すことを脳から命令される。

世間ではパラサイトが人間を食い殺す『ミンチ事件』が話題となり、徐々にパラサイトの素性が知れ渡っていく。

高校生の泉 新一(いずみ しんいち)も体内にパラサイトが侵入したが、脳を乗っ取られることは阻止し、右手に寄生されることとなる。

脳は支配されていないため、新一の感情は残ったまま、パラサイト『ミギー』との共同生活が始まる。

ミギーと徐々に心を通わせていく新一であったが、その異色な組み合わせから、他のパラサイトから命を狙われることとなる。

人間とパラサイトの壮絶な戦いが始まる中、どちらの立場でもある新一はさまざまな葛藤を抱えながら巻き込まれていく。

登場人物紹介

泉 新一(いずみ しんいち)
主人公の男子高校生。パラサイトである『ミギー』に右手を寄生されて共存生活を送ることとなる。ミギーの細胞が体内に取り込まれてから、並外れた身体能力を得る。その反面、人間らしい感情を少しずつ失くしていくことに葛藤を抱えていく。

ミギー
新一の右手に寄生したパラサイト。自身が生き残るために宿主である新一の命を最優先に考え、人間らしい感情は持っていない。頭がよく、バトルにおいて緻密な戦略を立てることができる。あらゆる知識を得るために熱心に書物を読み漁るなど、好奇心旺盛な性格。

田宮 良子(たみや りょうこ)
教師である女性に寄生したパラサイト。他のパラサイトよりも知能的に優れており、なぜパラサイトが生まれたのか?を疑問に思っている珍しい存在。パラサイトと共存している新一に興味をもつ。

村野 里美(むらの さとみ)
新一と同じ高校に通う女子高生。ミギーに寄生される前から新一とは恋人未満の関係。変わっていく新一に戸惑いつつも、常に気にかけ、そばで支えようとする。

加奈 (かな)
他校の女子高生。普通の人間より感性が優れており、パラサイトが発する特有の気配を察知することができる。あることから新一に興味を持ち、近づこうとする。

・後藤 (ごとう)
パラサイト5体分を集合させた生物。田宮 良子(たみや りょうこ)によって作られた。非常に高い戦闘能力を持ち、銃を使った攻撃も通用しない。新一とミギーを殺すために執拗に狙う。

浦上 (うらがみ)
サイコパスな連続殺人犯。警察に捕まっていたが、人間とパラサイトを見分けることができるため、人間側の都合により戦いの場に同行させられる。

パラサイト(寄生生物)
パラサイトに脳に寄生された人間。頭部を変形させ、刃のようにし、人間を切り刻み捕食する。

見どころ・おすすめポイント

内容が濃すぎるストーリー

寄生獣は何と言っても、環境問題まで視野を広げた、壮大なスケールで描かれた深みのあるテーマが魅力です。

単にパラサイトが人間に寄生していく話ではなく、環境に害を及ぼす人類の数を減らすためにパラサイトが誕生したのではないかという構図が面白いです。

この地球上にとって、人間は本当に必要か。

そして、読み進めていくと、パラサイトだけが悪者ではないと思わされる話の展開が秀逸です。

愛くるしい「ミギー」

新一の右手に寄生したミギーですが、最初の頃は他のパラサイト同様に無機質で冷たい発言ばかりが目立ちます。

人間の感情がわからないミギーには当然のことですが、新一と一緒に過ごす中で、人間という存在を少しずつ理解していきます。

だんだんと可愛く見えてくるミギーという存在が、漫画の展開に感動的な要素を作り出していきます。

頭がいいミギーが綿密な作戦を考え、他のパラサイトと戦う迫力あるバトルシーンも見どころです。

揺れ動く新一の感情

体にパラサイトの細胞が入ったことで、人間的な感情が失っていくことに不安を覚える新一。

周りの人間も新一の変化に気づいていきます。

父親がふと言ってしまった「ひょっとしておまえ、鉄でできてるんじゃないのか」というセリフが切なすぎます。

言った方も言われた方も悲しみに包まれてしまうシーンでした。

それでも必死に人間らしく生きようともがく新一の葛藤が、読んでいて飽きないポイントです。

「寄生獣」の感想まとめ

私が初めてこの作品を読んだとき、読み終わった後はしばらく寄生獣のことしか考えられなくなりました。

これだけ壮大なストーリーを、全10巻でまとめあげているコンパクトさに驚かされます。

寄生獣には感動的なシーンも多く、母親の愛情や、ミギーとの友情を描いた部分は、読んでいてこみあげるものがあります。

ストーリーの良さが取り上げられることが多いですが、パラサイトとのバトルも迫力があり面白く、グロい描写もかなりあります。

ここまでグロ描写も多いのに、一般的に有名になり人気があるということは、漫画のクオリティが高すぎるからだと思います。

日常生活で小さいことに悩んでいるときに、普通に生きていることのありがたみを感じさせてくれる作品でもあります。

ふとした時に、また読み返したいと思う漫画です。