うなぎ鬼は小説を元に漫画化された作品です。
ひょんなことから裏社会に関わることになった主人公が、見たくもない人間のどす黒い世界に引きずりこまれてしまいます。
概要
- 原作:高田 侑(たかだ ゆう)
- 作画:落合 裕介(おちあい ゆうすけ)
- 掲載:ヤングキングコミックス(少年画報社)
- 期間:2014年~2015年にかけて連載
- 巻数:全3巻 (完結)
あらすじ
主人公の倉見 勝(くらみ まさる)は体の大きさと強面の容姿に半面して、気弱な性格の男だった。
倉見はギャンブル依存症であり、ヤミ金に手を出し、借金に苦しむことになってしまう。
そんな倉見を借金苦から救ってくれたのは、裏社会で生きる千脇 公一(ちわき こういち)であった。
千脇に借金を肩代わりしてもらった代償として、裏社会の仕事を任されることになった倉見。
借金の回収や、デリヘルドライバーの仕事を行う倉見であったが、ある日、同じく千脇に拾われた富田(とみた)とともに、運び屋を任される。
運ぶ物の中身は明かされず、50~60キロのコンテナを運ぶだけで15万円という高額な報酬。
嫌な想像を働かせ、怪しさを感じる倉見であったが、千脇の命じるままに運び屋の仕事に従事する。
運んだ先は、不気味で廃れた黒牟(くろむ)という街のウナギ養殖場「マルヨシ水産」だった。
「ウナギはタンパク質ならなんでも喰ってしまう」という言葉が頭に浮かぶ倉見は、恐怖を感じながらも、運び屋の仕事をやり終えるのであった。
登場人物紹介
- ・倉見 勝(くらみ まさる)
- 主人公。ギャンブルで背負った借金を肩代わりしてもらったことで裏社会で働くことになる。体は大きく強面であるが、実は小心者。美人な妻がいる。
・千脇 公一(ちわき こういち)- 裏社会の仕事を生業にしている「千脇エンタープライズ」の社長。倉見の容姿を裏の世界で活かせると直感し、借金を肩代わりし会社で働かせる。
・富田(とみた)- 倉見と同じく千脇に拾われたチャラい容姿の男。元キャバクラの雇われ店長。運び屋で行った黒牟(くろむ)の街は不気味で二度と行きたくないと思っている。
・ミキ- デリヘルで働く清楚な見た目の女性。ドライバーの仕事をしている倉見をかっこいいと言い、好意的に近づく。
・秀(ひで)- 黒牟のウナギ養殖場「マルヨシ水産」で働く従業員。過去の仕事で顔に重度の火傷を負い、容姿を娘に嫌われ酒に逃げる生活を送っていた。
・山木(やまき)- 秀と同じ「マルヨシ水産」で働く若い男性。暗い性格で、他者と会話をすることが少なく、謎が多い人物。
見どころ・おすすめポイント
怪しすぎる裏社会
普通なら関わることのない裏社会で生きる登場人物の心情、ダークな世界観を描くのが非常に巧妙で、次々とページをめくって読んでしまいます。
借金の回収や、デリバリードライバーというだけでも十分に非日常なのですが、中身のわからないものを運ばされ、高額な報酬をもらうという怪しさ。
正体をはっきりと描かず、読者の想像を膨らませるストーリー展開に引き込まれます。
スラム街のような不気味な街「黒牟(くろむ)」
本作で出てくる「黒牟(くろむ)」という街では、日の当たらないところで生きている人間たちのジメジメした部分を不気味に描いているのが印象的です。
まるでスラム街のようで、本当にこんな場所があったら..とてもじゃないけど住めない!と想像を掻き立てさせます。
びっくりするようなわかりやすい怖さではないですが、ジワっと手に汗にぎるような恐怖を感じさせます。
人間の二面性
普段は小心者である主人公の倉見や、その他の登場人物がみせる人間の裏の顔、奥底に眠るモンスターのような凶暴性が出るシーンがたまらなく面白い。
人間だれしもが、普段はみせない闇の部分は少なからずあると思いますが、本作では時にそれがむき出しになります。
作画の落合 裕介(おちあい ゆうすけ)さんの描写もリアルで怖いです。
特に、狂気に満ちたときや、卑屈な感情をみせる人間の目つきは特徴的でゾクッとさせてくれます。
「うなぎ鬼」の感想まとめ
「うなぎ鬼」を読み終わった後は、何とも言えない後味の悪さに浸れます。
暗い漫画が苦手な人にはあまり受け入れられないと思いますが、こんな不気味な漫画をもっと読みたいという衝動に駆られました。
自身の嫌な日常を忘れさせてもらえるほど、漫画の世界に入り込んだと思います。
主人公の倉見が、普段はまともな思考回路の人間なので、ついつい感情移入しながら読んでしまいます。
これは自分だけかもしれませんが、登場人物が罪を犯し、後悔しているシーンがあると、後ろめたいことをしていない自分になぜか安心感を感じてしまいました笑
不気味な裏社会の世界を覗き見たい方に、是非読んでほしい漫画です。